緩やかなオレンジ

「何笑ってるんだ?」

「空ってちゃんと見ると面白いね」

美紀の言葉に同じように見上げる。

「さっき慎吾が寝てるとき空が水色から薄い灰色になって、だんだんオレンジになったんだ。その変わり目が綺麗だったよ。雲と雲が重なって、後ろの雲に黒い影ができて。こうやって時間を気にしないで見てると落ち着く」

微笑んでそう言った。「慎吾がずっと見ちゃう理由がわかった」なんて共感してくれるからその横顔に見とれた。
飽きずにここに来る理由を言わなくても悟った美紀は、長年そばにいるだけあって感性が似ている。

「慎吾、今度はちゃんと学校から一緒にここに来ようよ。おいて行かないで」

「いいのかよ、俺といて」

「え?」

「中田先輩に告白されたんじゃないの?」

俺の言葉に美紀が戸惑うから、質問した方も居心地が悪くなる。

3年の中田先輩が美紀に彼氏がいるのかと聞いてきたときに俺は正直にいないと言った。俺と美紀が付き合っているのかと疑う先輩に否定する言葉をひたすら並べ立てた。
文武両道で容姿端麗な中田先輩を敵に回したら田舎の高校ではやっていけないことを理解していた。だから自転車置き場に行くように教えた。後の判断を美紀に委ねた。

「まだ返事してないんだ。てか慎吾が先輩に教えたの? 私がいつも自転車置き場で慎吾を待てるって」

「そうだよ」

「だから先に行っちゃったんだ……」

美紀が眉間にしわを寄せる。俺はその場にいたくないから先に帰ったのだ。もし美紀が告白を喜んでしまったら……。先輩の気持ちを受け入れるところなんて見たくない。

「慎吾はどう思う? 先輩と付き合ってもいいのかな?」

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