コイノヨカン
買い物の後、ネクタイを選んでもらったお礼にと食事に誘った。
とは言っても、デパートの中の回転寿司。

「回転寿司、初めてだったりします?」

「いや、昼食に利用することもあるし。でも、女性と2人では初めてだね」

やっぱり。

「ごめんなさい。でも、ここは私がご馳走しますから」

「ええ?」
健さんが驚いている。

「ネクタイを選んでもらったお礼に、ご馳走させていただきます」

「困ったなあ。女の子に支払いなんてさせられないよ」

だから、ここを選んだ。

「それに、」

一旦箸を止め、私は健さんを見た。

「もし、私の気のせいなら凄く凄く恥ずかしいのですが」

「うん。何?」

健さんも箸を置いた。

「もし、健さんが私のことを気にかけてくださっているんだとしたら、」

「うん」

「私、好きな人がいるんです」

言ってしまった。

「彼氏?」

「いえ、彼氏とは・・・違うかもしれません」

「じゃあいいじゃない。僕はいいよ。いつか僕の事好きにになるかもしれないんでしょう?」

いや、それは無理。
健さんがって事ではなく、私自身が無理。

「私、そんなに器用なことはできません。もしそんなことになったら、自分で自分を許せないと思います」
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