コイノヨカン
「今夜はここを使うといいよ」

連れて行かれたのは、母屋の客間。

「疲れたろう。寝るなら出ていくけれど」
いつも以上に気を遣ってくれる渉さん。

「いてください。1人になるのが怖くて」
素直に言えた。

何だろう、この恐怖感。
部屋に散らかった自分の下着を見て、震えが止らなくなった。

「ビールでも飲むか?」
「うん」

ビールでも、薬でも飲みたい。
このままでは眠れないと思う。
情けないな。
私って、もっと強いと思っていたのに。


プシュッ。
ビールを開けて、一気に喉に流し込む。

「ちゃんと食べながら飲めよ」
渉さんがつまみを差し出した。

「うん」
私は段々気持ちよくなっていった。



「栞奈、もう止めとけ」
何本か目のビールを開けたところで、渉さんに止められてた。

いつのまにかテーブルの上にはビール缶が並んでいる。

「そろそろ寝なさい」
テーブルの上を片付け始める渉さん。

適度に酔いの回った私は、テーブルに頭を落として渉さんを見上げた。
今なら、素直に自分の気持ちを伝えられるかもしれない。
こんな時だからこそ、正直に、

「ずっと、側にいて」
お酒の力を借りて、言ってしまった。

「ずっとって・・・」

やはり、渉さんは困った顔をした。

そりゃあそうだよね。
ただの契約交際なんだから。

困惑した渉さんの表情を見極めてから私は目を閉じた。
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