コイノヨカン
「随分酔ったなあ」

コテンと頭を落とした私に、渉さんの嘆き声。
せっかくだから、このまま寝てしまおう。

その晩。
部屋の片隅で膝を抱えた渉さん。
時々、様子を見に来る奥様。
ずっと気付いていた私。
みんな寝られない夜を過ごした。



「おはよう」
「おはようございます」

痛っ。
頭が割れそう。

「昨日のこと覚えてる?」

昨日のこと・・・もちろん覚えている。
でも、言えない。

「酔っ払って、あまり記憶が」

「覚えてないの?」
「まあ」

はぁー。
渉さんの大きな溜息。

「栞奈」
「はい」

「昨日は怖い思いをして大変だったと思う」
「はあ」

「でも、それと酒癖は別だ。飲み過ぎて記憶がないとか、良くないよ」

もしかして、私は今怒られてる?

渉さんが言うように、昨夜は随分飲んでしまった。
お酒の力を借りて普段言えないようなことも言った。
でも、それは私の本心なのに。

「しばらく酒は禁止。いいね」

こんなに怒るのは、迷惑だったからだろうか?
やはり、これ以上近づいてはいけないんだ。

その後、あまり寝ていないはずの渉さんは不機嫌なまま仕事に行った。
私は1日お休みして、警察の事情聴取を受けることとなった。
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