コイノヨカン
「本当に大丈夫なんだな?」
会社へ向かう途中、運転席から助手席を覗き込む。

「うん」
完全復活とは言わないけれど、もう平気。

「どうせならスーツも全部捨てれば良かったのに」
ブツブツと呟く渉さん。

「全部買い換えたら、私が生活できなくなるし」

「そんな物俺が・・・」
言葉を濁した。

昨日の夜も母屋に泊まった私。
渉さんはいつもより早く帰ってきて、私が寝るまで部屋にいてくれた。
みんなが私を気遣ってくれているのが分かる。
申し訳なくて・・・ありがたい

「今日は一緒に帰るから、待っててくれ」

「え?」

渉さんは昨日も早く帰ってきたし、きっと無理をしたんだと思う。
仕事だってたくさん残っているはず。

「私、1人で帰」
「いいから、待っていろ」
怒っているような顔。

「分かりました。でも無理はしないで。私は本当に平気だから」

「ああ」

私は、渉さんの重荷になりたくない。
私のせいで仕事が遅れたり、仕事の時間を奪ってしまうような、そんな女になりたくない。
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