コイノヨカン
あの日から、私はお屋敷で過ごすのが辛くなってしまった。
奥様も希未ちゃんも変わらず接してくれることに、申し訳なさを感じている。
「ほら、行くよ」
今日も朝食を終えた渉さんが声をかける。
私が何度1人で行きますと言ってもきいてくれない。
はあー。
もう、溜息しか出てこない。
結局今日も、渉さんの車に同乗して会社に向かうことなった。
ホテルの地下にある役員駐車場。
「先に行って」
いつものように言われ、一足先に車を降りた。
「おはよう」
「おはようございます」
オフィスに着くと、萌さんが朝の準備をしている。
「あれ?」
パソコンを立ち上げた萌さんの驚いた声。
「どうしました?」
「うん・・・」
デスクに回って画面を見ると、
あっ。
今度は私が固まった。
表示されていたのはネットニュース。
『松田財閥の御曹司と、香川商事の令嬢が婚約!』
これって、渉さんと凜さん。
トゥルル トゥルル。
ほぼ同時に鳴り出した電話達。
ほとんどが、婚約報道の問い合わせや渉さん宛の物だった。