コイノヨカン
ほぼ定時で上がり、一旦着替えに帰った私。
奥様に事情を話し、お泊まり用の荷物を作って駅に向かった。

その時、
ピコン
健さんからのメール。

『今どこ?時間があれば会えない?』

「何か用ですか?」

『うん』

何だろう?
ちょうど萌さんの家に持参するお土産を見ようとしていた私は、健さんと待ち合わせすることにした。

そうだ、携帯は切っておこう。
今は渉さんに会いたくない。



健さんとはデパートで合流し、萌さん家に持っていくお土産を選ぶ。
スイーツにするか、おつまみにするか・・・悩みどころ。

「ねえ、これは?」
健さんが手にしたのは思いの外小さな箱。

「何ですか?」

「チーズ。北海道の酪農家が手作りで作っていて美味しいんだ」

へー。
ちょっと高いけれど、健さんオススメなら間違いなさそう。

「じゃあ、それにします」
私はレジに向かった。



「買い物も終わったことだし、これから食事でもどう?」
「食事?」

でも、萌さんの家に行くって言ってあるし・・・

「実は萌ちゃんには言ってあるんだ。というか、悠仁と食事に出ているはずだから」

はあ、そういうこと。

「食事をしたらちゃんと送るから。その頃には萌ちゃんも帰るはずだし」

なぜか必死に誘われる。

「美味しいものを食べて元気を出そうよ」

え?
もしかして、私を気遣っているんだろうか。
そんなわけ・・・私と渉さんのことを知っているはずない。
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