コイノヨカン
結局、私はお誘いに乗ることにした。
どうやら思惑がありそうで、断ることができなかった。

「どうしたの?」

デパート近くの和食屋さん。
通された小さな個室で、私を見る健さん。

「何で今日私を誘ってくれたんですか?」

「うーん」
珍しく答えに困ってる。

「私が落ち込んでいるのを知っているんですか?」

「栞奈ちゃん、落ち込んでるの?」

「まあ」

「原因は?」

あれ?私が質問される側に変わっている。


「偶然ですか?」

質問には答えず、再度尋ねた。

「本当はね、萌ちゃんから元気がないって聞いたんだ。それに、渉の婚約報道もあるでしょ?」

チラチラと視線を送ってくる。

やっぱり、何か知っているんだ。
でも、一体どこまで知っているんだろう。
それがわからないことには、うかつなことは言えない。

「ほら、色々考えていないでまずは食べよう。ここの料理は美味いんだ」

そう言われて見ると、箸を付けるのがもったいないような綺麗な料理の数々。
せっかく用意された料理を断ることもできず、私も箸を付けた。


「うわ、美味しい」
「でしょう?」
「はい。とっても」

美味しい料理って、本当に凄いと思う。
あれだけウジウジと悩んでいたことを、一瞬忘れられた。
お肉、お魚、煮物、ご飯にデザートまでいただき、私は笑顔になれた。
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