コイノヨカン
「帰るぞ」
いつの間にか荷物を持って歩き出す渉さん。
「待って」
私は足を止めた。
「帰ってから話そう」
渉さんは、再び歩き出そうとする。
「イヤです。ちゃんと説明してもらうまでは帰りません」
「栞奈」
渉さんが天を仰ぐ。
しばらく考え込んでから、渉さんは諦めたように話し始めた。
「栞奈は俺と交際の契約をしたよな?」
「ええ」
週1度のデートと、希未ちゃんの家庭教師が離れに住む条件だった。
「実は、ばあさんは栞奈のことがとても気にいってしまってね。俺たち契約とは別に、『栞奈と交際している間は本社への異動を待ってくれる』って約束をしたんだ」
「異動、ですか?」
「ああ。じいさんは今入院中で、次の株主総会では引退が発表される。そのときまでに俺は結果を出さないといけないんだ。でも、ばあさん達は少しでも早く俺を本社に呼び戻したい。その思いのせめぎ合いって所だ」
毎日側で仕事をしている私ならわかる。
今抱えているプロジェクトは渉さんが寝る間を惜しんで手がけたもの。
離れられない気持ちはわからなくないし、渉さんの会社に対する思いも知っているつもり。
でも・・・
いつの間にか荷物を持って歩き出す渉さん。
「待って」
私は足を止めた。
「帰ってから話そう」
渉さんは、再び歩き出そうとする。
「イヤです。ちゃんと説明してもらうまでは帰りません」
「栞奈」
渉さんが天を仰ぐ。
しばらく考え込んでから、渉さんは諦めたように話し始めた。
「栞奈は俺と交際の契約をしたよな?」
「ええ」
週1度のデートと、希未ちゃんの家庭教師が離れに住む条件だった。
「実は、ばあさんは栞奈のことがとても気にいってしまってね。俺たち契約とは別に、『栞奈と交際している間は本社への異動を待ってくれる』って約束をしたんだ」
「異動、ですか?」
「ああ。じいさんは今入院中で、次の株主総会では引退が発表される。そのときまでに俺は結果を出さないといけないんだ。でも、ばあさん達は少しでも早く俺を本社に呼び戻したい。その思いのせめぎ合いって所だ」
毎日側で仕事をしている私ならわかる。
今抱えているプロジェクトは渉さんが寝る間を惜しんで手がけたもの。
離れられない気持ちはわからなくないし、渉さんの会社に対する思いも知っているつもり。
でも・・・