コイノヨカン
「ところで、頼んでおいた件はどうなった?」

「ああ、もう少しで確証がつかめる」

「そうか」

大地には商品失踪事件の調査を依頼していた。
あの件もこのままにはさせない。


「もし、犯人が身近な人だったらどうするんだ?」

水割りを口に運びながら、大地は聞いてきた。

「やはり、そうなのか?」

「色々思いを巡らすな。もしもって言ってるだろう?」
俺の反応に慌てて否定する大地。

俺は身内の可能性が高いと思っている。
企業も大きくなれば、色んな考えを持った人間も出てくるし、利害関係も発生するから。

「たとえ誰の仕業でも、責任は取ってもらう」

「そうか」
大地はそれ以上何も言わなかった。

身内を断罪すれば、摩擦も起きる。会社自体もダメージを受けるだろう。
それでも俺は戦う。
たとえ自分が傷ついても、やられたらやり返すだけだ。


その晩は久しぶりに朝まで飲んだ。
帰っても寝られそうにないし、飲まずにはいられない気分だった。
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