コイノヨカン
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薄暗く照明の落とされたレストラン。
窓の外には暮れてゆく夕景。
眼下にはおもちゃのような街並み。
それもそのはず、ここは地上60階の高層ホテル。
普段なら入ることもない場所。

「気にいった?」

キョロキョロと落ち着きなく見渡している私に、渉さんが声をかけた。

「はい」

これをイヤだという女子はいないと思う。
とにかく、凄すぎる。

「来てくれないんじゃないかと思ったんだ」
珍しく弱気な渉さん。

「私もちゃんとお話ししないとと思っていたので」

これは嘘ではない。
でも、顔が合わせにくいなと思っていたのも事実。


「失礼いたします」
声がかかり、最初のお料理が運ばれてきた。

「うわぁ」

声が出てしまうくらい綺麗な盛り付け。
確かここって、料理の評判が良くて人気サイトでも上位に入っている店。
それに・・・

「もしかして、貸し切り?」

さっきから他のお客さんは全く見ないし、照明も私達の席以外は消えている。

「ああ」
さも当然のように返事をされた。

こんな高級レストランを貸し切るなんて、

「何で?」
それが素直な感想。

「何でって・・・イヤだった?」
逆に不思議がられている。

「イヤなわけないけれど・・・凄すぎて」

もしかして別れ話でもされるんじゃないかと、勘ぐってしまう。

「とにかく食べよう。ワイン、飲めるよな?」
「ええ。でも、いいの?」

「え?」

「私、お酒禁止のはずじゃあ」

ククク。
おかしそうに笑う渉さん。

「そんなの、守っていたの?」
「ええ」

確かにお酒では失敗をしたし、禁止って言われても仕方ないかなって思っていた。
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