コイノヨカン
「ねえ栞奈?」

食事も進みデザートを食べながら、渉さんが私を呼んだ。

「何?」

「健とは何度会った?」

ゴホッゴホッ。
思わずむせてしまった。

「何動揺しているんだよ」

「別に、動揺なんて」

「じゃあ教えて」

「えっと、初めて会ったのは萌さんと萌さんの彼も一緒で、その後買い物に付き合ってもらったときと、一昨日の全部で3回」

別に悪い事はしてないぞと正直に話した。

「俺の知らないところで、3度も会っていたのかあ」
大袈裟に驚いてみせる渉さん。

「でも、そのうち1度は萌さんも一緒だったし」

「2度は二人っきりだったてことだろ?」

「まあ。でも2人の時は買い物して食事をしただけで、お酒も飲んでないし」

「高見さんが一緒の時は酒も飲んだんだあ。俺は聞いてないけれど?」

「言いましたよ。ほら、ショップオープンの日。帰ったら渉さんが離れの前にいて」

「ああ、高見さんと、高見さんの彼と飲んだんだったね」

ちゃんと覚えてるじゃない。

「健がいたなんて一言も言わなかった」

うっ。

「渉さんだって、凜さんと出かけるじゃない」

思わず言い返してしまった。

「もう健とは会わないでほしい」

「努力します」

「努力って」

「だって、用事があれば会いますよ。今回のことだって、健さんにも弁解のチャンスはあるべきだと思うし」

「そんな物、必要ない」

ああ、ああ、いつもの暴君に戻ってる。
こんな時自分に後ろめたいところがなければ、強く言い返すんだけれど・・・

「大体、栞奈は健が松田の関係者だって知っていたんだろ?」

うっ。
痛いところを突いてくる。
こうなったら素直に認めるしかない。

「確かに健さんが松田財閥の縁戚の人だと知っていましたし、渉さんを知っているとも言っていましたから、誤解されたくなくて黙っていました。ごめんなさい」

「分かってくれればいいよ。これからは何でも隠さずに話して欲しい」

「はい」

これで、自分の気持ちも渉さんの気持ちも確認することができた。
健さんや凜さんのことなどの問題は山積しているけれど、今は渉さんを信じてみよう。
窓の外に広がる宝石箱みたいな夜景を見ながら、少しだけ心が軽くなった。
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