コイノヨカン

「あれー、栞奈ちゃん」
呑気な声が聞こえてきた。

ええ？

ツカツカと遠くの方から現れたのは、

「健さん」
自分の声が震えているのが分かる。


「何してるの？」
それは、私ではなく男の子達に向けた言葉。

「え、凛が・・・」
なぜか言葉を濁す。

「彼女は渉の恋人だよ。俺の友人でもある。もしも、なにかしようって言うなら黙ってないけど？」
凄く威圧的な態度。

男の子は黙ってしまった。

「いつまでそうしてるの？渉を呼ぼうか？」
私の肩を抱いたまま動かない様子に、携帯をポケットから取り出す健さん。

「いや、待ってください。誤解です」
急に慌て出す。

「誤解？」
健さんの意地悪い顔。

「あのー、違うんです。人違いでした」
私から手を離し、必死に言い訳を始めた。

「凛に、俺たちの相手を連れてきたって言われて、てっきりそういう女性なんだと思ったんです」

はあー。
健さんは溜息をつくと、

「いいか、二世会は社交の場でもあるけれど、ビジネスのつながりを作る場でもあるんだ。女の子と遊びたいんなら他でしてくれ。今度見つけたら、出入禁止だからな。お前らのおやじさんにも言うぞ」
強い口調。

男の子達は直立不動で聞いていた。