コイノヨカン
「おはようございます」

いつもより早く母屋に行った私。

結局朝までよく眠れなかった。
こんな時は起きてしまうのが一番と、早めに母屋へ出て来た。

「あら、おはよう」
奥様が台所に立っている。

何か手伝おうかと台所に入ったとき、

「栞奈さん、おはよう」

その声に、私の足が止った。

「どうしたの?」
何もなかったかのように笑いかける凜さん。

一体どの口が言うかなあ。

私は返事をしなかった。

「凜さんがパンを焼いてきてくれたのよ」

奥様がカゴ一杯のパンを見せる。

確かに美味しそう。
でも、私は食べない。
昨日も事を思えば、顔も合わせたくもない。
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