コイノヨカン

拉致

ん?

んんん?

体中に伝わる鈍い痛みで、目が覚めた。


ここは、どこ?

額に手を当てようとして、気付いた。

私、動けない。


真っ白な天井。
清潔なベット。
窓にはカーテンが掛かり、外は見えない。
室内の電気は付けっぱなしになっているから、暗くはない。

きっとどこかのホテルだと思う。

そして、
ベットの端から伸びたロープと手錠で拘束されている。


何があったんだっけ・・・

えっと、

週末の土曜日、私は実家に向かっていた。

たまには顔を出しなさいと母さんに言われ、
奥様にも渉さんにも伝えて、朝の9時過ぎにはお屋敷を出た。

送って行こうかと渉さんに言われたけれど、
買い物もしてゆっくり行きたいからと断わった。

それから・・・

駅に向かい、実家へ向かう電車に乗り込んだ。
そこまではハッキリ覚えている。

実家までの乗り継ぎは2回。

途中の駅で階段を降りて、ホームへ向かっていたら・・・

ああ、声をかけられたんだ。

「お嬢さん。落ちましたよ」

そう言われて振り返って
・・・その先の記憶がない。

「痛たた」
頭を起こそうとして、痛みが走った。

何か薬でも盛られたみたい。

今何時だろう?
どの位時間がたっただろうか?
どこかに電話でもないかと、キョロキョロと見渡すが見当たらない。
困ったなあ。

私のカバンは・・・

「あるわけないか」

私は割と冷静でいた。
私の姿が見えないとなれば、渉さんが探してくれるはず。
すぐに助けが来るだろう。
そう楽観していた。
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