コイノヨカン
「実はお電話をもらってから栞奈の携帯にかけてみましたが繋がらず、アパートに行ってみると火事で焼失したと聞きまして。弟の旺が松田渉さんという方に聞けば分かるかもと言うので、こうしてやってお邪魔したところです。一体何が起きているんでしょうか?.」
お父さんが深く真面目な声で尋ねた。

栞奈の奴、本当に何も言ってなかったのか。
さあどう説明しよう。

「こんな時はすべてをありのままにお伝えするのがいいのよ」
とばあさんが言い、

学生時代のボランティアでたまたまばあさんと知り合い、たまたま火事に遭った栞奈を家の離れに泊めた。
住むところが見つかるまで、妹の家庭教師をする代わりに離れに住んでもらうことにした。
栞奈が俺の直属の部下だとは、後になって知った。
と俺が説明した。

ウンウンと聞いていたお父さんが、俺を見る。

「それだけですか?」

「えっ?」

「旺が、あなたと栞奈は親しい間柄のようだったと言っていたものですから」

はあ。
旺の奴。

「実は、お付き合いをしています」

別に隠すつもりはない。
いつかはきちんとご挨拶しようと思っていた。

しかし、
その場にいた誰もが黙ってしまった。

「お付き合いって、あなたには婚約者がいるんじゃないですか?テレビで見ました」

どうやら凛のことを言っているようだ。

「それは誤解です」

言いたいことはあるが、今はそれ以上のことは言えない。

「私には理解できません」

間違いない、お父さんは怒っている。
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