コイノヨカン
「ところで、頼まれていた調査の結果だが」

「分かったのか?」

「ああ」
なんだか大地の表情が暗い。

「良くない結果なのか?」

「まあな」


依頼していたのは、商品盗難事件の調査。
ブランドショップオープンのために調達した商品が、入荷直前に姿を消した事件だ。
この件ではホテルとして大きな被害を被った。
香川社長の尽力で何とか急場はしのいだし保険金も出たため実害はなかったが、大変な思いをした。

「なあ、渉」

大地は2杯目のグラスを空けると、真っ直ぐに俺を見た。

「何だよ。そんなにもったい付けるな。大体の予想は付いているんだ」

「そうか」
観念したように大地はカバンから書類を取り出した。


「いいか、頭に来ても暴走するなよ。下手したらお前や、松田財閥そのものが傷つくことになるんだからな」
随分大袈裟なことを言う。

書類を受け取り、俺は目を通した。

内容は予想通り。
商品の紛失に手を貸していたのは、身近な人間だった。
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