コイノヨカン
「これからどうする気だ?」
心配そうに見る大地。

「そうだなあ」

俺は水割りを口にした。

今までの俺だったら、怒りにまかせて相手に詰め寄ったと思う。
すべての証拠を公にして、たとえ自分が傷ついてでも犯人を追い詰めただろう。

「公にするのか?」

これは、松田グループの顧問弁護士としての心配だろうか?

「表沙汰にすれば、自分にも火の粉が降りかかる事くらい、俺にだって分かるよ」

「じゃあどうするんだ?」


「健を呼んで直談判するか」

「はあ?」
大地は意味が分からないって顔で俺を見た。

「事件がおばさんの仕組んだことだとしたら、止められるのは健だけだろう」

「そうだけど」
不思議そうな大地。

まあな。
あれだけ敵対していた健と手を組もうとするなんて、俺自身ビックリしている。

「何かあったのか?」

「まあな」

「一体どうしたんだよ」

「うーん」

「渉、ハッキリ言え」
珍しく、大地が強い口調だ。


「実は、栞奈が助けてもらったんだ」

2世会の席で栞奈が絡まれたとき、健が助けてくれなければ大変な目に合っていたはずだ。
考えただけでも恐ろしい。
どれだけ感謝しても足りない。
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