コイノヨカン
「渉?」
大地が不思議そうに俺を見る。

分かっている。
俺らしくないんだろう。
たとえ自分が傷だらけになっても相手に挑んでいくのが今までの俺だった。

「本当にそれでいいのか?」
健の信じられないって顔。

「ここで争っても誰の得にもならないからな。ただし、松田財閥の後継者の座は俺に譲ってもらう。それでいいか?」
俺は冷静だ。

「俺に拒否権はないだろう」
健も落ち着いている。


俺と健は大地を証人として、契約を交わした。

健は責任もっておばさんを説得する。
今後は俺にも栞奈にもに危害を加えない。
俺は今と同等以上の待遇で健を優遇する。

大筋で異論はなかった。


「それにしても、栞奈ちゃんは凄いね」
かなり酒の回った大地。

「何だよ」

「あの渉が引くのを初めて見たよ」
愉快そうに笑われた。
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