コイノヨカン
それから奥様手作りの夕食をご馳走になり、家まで送ってもらった。


正直、美味しいはずの夕食の味も希未ちゃんとの会話も私には記憶がない。
そのくらい奥様の話は衝撃だった。


「お帰り」
「ただいま」

旺に声をかけ、台所を覗く。

「母さんただいま」
「お帰り、食事は?」

「すませてきた」

私の看病のために半月以上仕事を休んだ母さん。
今は土日返上で仕事を片付けているらしい。

「悪いけれど、時間がなかったから買ってきたおかずでごめんなさいね」

「「別に良いよ」」
父さんと旺の声。

「ごめん。私が作れば良かった」

今日はお休みだったのに・・・

「いいのよ。それよりお風呂してくれる?」
「はーい」

「もー、母さん。俺のライブで着る衣装と他のものを一緒に洗うなよ」
旺が怒っている。

「嫌なら自分でクリーニングに出しなさい」
「そんなもったいないことができるか」

あー、なんて我が家は騒々しいんだろう。
渉さんの家はみんな静かで上品なのに。

渉さんと私では育った環境が違いすぎる。
奥様が言っていたのはこういうことかもしれない。
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