コイノヨカン
夕方。
約束通り楓さんのお宅に帰宅した。
「お邪魔します」
さすがに、ただいまとは言えない。
「お帰りなさい」
希未さんが迎えてくれた。
「スーツをありがとう。助かったわ」
お陰で今日1日過ごせた。
「お役に立ててよかったです」
「クリーニングに出して返すから」
「いいんですよ。それより、お仕事はどうだったんですか?」
そう言えば昨日はバタバタしていてほとんど仕事にならなかったから、今日がほぼ初仕事だった。
「アクシデントもあったけれど、何とか1日が終わったって感じね」
それが率直な感想。
「栞奈さん。ちょっといいかしら?」
奥から顔を出した楓さんに呼ばれた。
「はい」
私はカバンを持ったまま、楓さんの後に続いた。