コイノヨカン
何度も大地さんを断って、病院のタクシー乗り場に向かおうとした。
その時、
「栞奈」
渉さんが駆けてきた。
「渉さん」
「すまない。送ってやれないけれど、また連絡するから」
そう言うと泣いている私の肩を抱いた。
「ごめんなさい」
また渉さんの負担になってしまった。
「渉、戻りなさい。皆さんお待ちなのよ」
追ってきた奥様の声。
「渉さん、私はいいから戻って」
「しかし・・・」
「渉、あなたは松田の家の跡取りなのよ。今すべきことをしなさい」
奥様の凜とした言葉に、渉さんの手が離れた。
「送るよ」
いつの間にか隣りに立った大地さん。
「いいんです」と何度も断わったけれど、車に乗せられた。
「悪かったね」
「いいえ」
大地さんが謝ることじゃない。
都心を抜け、自宅に近づく頃にはすでに1時を回っていた。
みんな寝てるよね。
きっと怒られる。
私はこっそりと裏口から自宅に帰った。
当然、朝には父さんにバレ、「2度と彼に会うんじゃない」と言われてしまった。
それからは本当に慌ただしかった。
幸い会長はすぐに意識を取り戻し大事には至らなかったが、高齢であることを考えればいつ何が起きても不思議ではない。
今回のことで会長の入院も公になり、渉さんはホテル勤務から本社へ異動になった。
私も溜った疲れが出たようで、久しぶりに熱を出して寝込んでしまった。
その後父さんに押し切られる形で会社も辞めた。
元々1時間半の通勤時間には無理もあり、仕方ないとも思うけれど・・・文句を言うこともできなかった。
その時、
「栞奈」
渉さんが駆けてきた。
「渉さん」
「すまない。送ってやれないけれど、また連絡するから」
そう言うと泣いている私の肩を抱いた。
「ごめんなさい」
また渉さんの負担になってしまった。
「渉、戻りなさい。皆さんお待ちなのよ」
追ってきた奥様の声。
「渉さん、私はいいから戻って」
「しかし・・・」
「渉、あなたは松田の家の跡取りなのよ。今すべきことをしなさい」
奥様の凜とした言葉に、渉さんの手が離れた。
「送るよ」
いつの間にか隣りに立った大地さん。
「いいんです」と何度も断わったけれど、車に乗せられた。
「悪かったね」
「いいえ」
大地さんが謝ることじゃない。
都心を抜け、自宅に近づく頃にはすでに1時を回っていた。
みんな寝てるよね。
きっと怒られる。
私はこっそりと裏口から自宅に帰った。
当然、朝には父さんにバレ、「2度と彼に会うんじゃない」と言われてしまった。
それからは本当に慌ただしかった。
幸い会長はすぐに意識を取り戻し大事には至らなかったが、高齢であることを考えればいつ何が起きても不思議ではない。
今回のことで会長の入院も公になり、渉さんはホテル勤務から本社へ異動になった。
私も溜った疲れが出たようで、久しぶりに熱を出して寝込んでしまった。
その後父さんに押し切られる形で会社も辞めた。
元々1時間半の通勤時間には無理もあり、仕方ないとも思うけれど・・・文句を言うこともできなかった。