コイノヨカン
別れてから、栞奈とは連絡を取らなくなった。

それがけじめと思ったし、1度声を聞けば気持ちが揺らぐ気もした。
それでも、
大地は近況を知らせてくるし、健に至っては時々食事にも出かけているらしい。

クソッ。
なぜか腹立たしい。

プププ プププ
健からの着信。

「何だよ」
無愛想に出た。

栞奈のことがあってから時々話すようになった健。
松田財閥を背負っていくと決めた今の俺には、貴重な相棒だ。

しかし、最近になって忙しくて時間がないってあれだけ言っているのに何のようだろう。

「なあ渉。今、栞奈ちゃんがお見合いしてるぞ」

え?

「駅前にできたうちの系列ホテルがあっただろう。そこのロビーで男といる」
「お前、何で知っているんだ?」
「聞いたんだよ、栞奈ちゃんに」

なんだか自慢げに聞こえるのは気のせいだろうか?

お見合いかぁ。
栞奈だって適齢期な訳で、話がきてもおかしくはない。
もちろん、俺がとやかく言う筋合いでもない。
しかし・・・

健の電話を切ってから、俺は色々と考えてしまった。

フン。
なんだか、悔しいな。

もちろん、栞奈には幸せになってもらいたい。
俺にはできなかったから、本心からそう願っている。
でもなあ・・・


「常務。会議がひとつ延期になり時間が空きましたので、次の資料をお持ちしました」
ちょうど秘書が入ってきた。

へー、時間が空いたのかあ。

「時間、どの位あるの?」
「1時間半くらいでしょうか」

ふーん。
1時間半。
ホテルまで行って帰る時間は十分あるな。
栞奈の相手の顔を見てやるか。
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