コイノヨカン
随分長く泣いていた気がする。

ダイニングに座り、お茶を出され、背中を撫でられた。
奥様の温かい手が、私の気持ちを落ち着かせていった。



ガチャッ。
玄関の開く音。

ドタドタと足音がして、

「栞奈っ」
突然、渉さんが現れた。

驚いて立ち上がった私を、抱きしめる渉さん。
私はためらうことなく身を任せた。


「母さん。知らせてくれてありがとう」
「早かったわね」

どうやら奥様が連絡していたらしい。


「栞奈、もう迷わないよ」
「うん」
私も覚悟を決めた。


「栞奈さん。今まで辛いことを言ってごめんなさいね。あなたたちが決めたんなら、もう反対はしないわ」

不思議なくらいにこやかな奥様。

「いいんですか?」

「ええ。覚悟を決めて、決心したんならそれでいいのよ」

「ありがとう、母さん」
「ありがとうございます」

包み込まれた温もりのなかで、私は決心した。

もう2度と、この手を離さない。
どんなことがあっても、側にいる。

私はこの人と生きていく。
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