コイノヨカン
渉と2年の交際期間ののちに結婚したのが半年前。
結婚にあたり同居ではなく2人でマンションに住もうかとも言ってもらったけれど、どうせ松田の嫁になるんだからと同居を選択した。
とはいえ、少しでも2人の時間が持てるようにと今までゲストルームとして使っていた離れをリフォームしてもらい敷地内別居の形。
食事も自分で作ったり母屋で食べたりの生活。
このほど良い距離感がいい感じになじんできた。
この2年間で渉は松田コンツェルンの副社長となり数年後には社長となる予定。
当然仕事も忙しくて、海外出張も増えた。
私は結婚まではグループ企業で秘書として働き、その後は専業主婦をしながらおばあさまの手掛けてこられたボランティア活動のお手伝いをしている。
松田コンツェルンくらいの規模になれば財団が創設されていて、おばあさまはそこの理事長。
いつかは私にその職を譲りたいとお考えらしい。
「なあ栞奈、俺のプライベート用の携帯知らないか?」
先に朝食を済ませ、離れで着替えていた渉が戻ってきた。
「ええー、知らないわよ。昨日の夜旺にメールしてたから寝室じゃないの?」
「そうか」
すっかり身支度が終わり出かける直前らしい渉は、困ったなって顔で視線を泳がせる。
「今いるの?」
「いや」
「じゃあ、私が探しておいて何かあれば仕事用の携帯に連絡を入れるから。もう、出かける時間でしょ?」
「ああ」
本社に戻ってから専属の運転手さんのお迎えが来るようになった渉。
さすがにせかされることはないが、待たれると気になって私も落ち着かない。
「じゃあ、行ってくる」
「気を付けてね」
とにかくいってらっしゃいと渉を玄関まで見送る。
そのまま出ていくのかと思ったのに、キョロキョロとあたりを見回す渉。
「ねえ栞奈」
ん?
呼ばれて見上げた瞬間、
チュッ。
唇が触れ合った。
「もう、渉ったら」
ここは母屋で、お母さまだって希未ちゃんだっているのに。
口をとがらせてしまった私に、なぜかご機嫌そう。
「お望みならもう1度?」
「バカ」
耳まで真っ赤になった私は、渉の背中を押すように玄関から追い出してしまった。
結婚にあたり同居ではなく2人でマンションに住もうかとも言ってもらったけれど、どうせ松田の嫁になるんだからと同居を選択した。
とはいえ、少しでも2人の時間が持てるようにと今までゲストルームとして使っていた離れをリフォームしてもらい敷地内別居の形。
食事も自分で作ったり母屋で食べたりの生活。
このほど良い距離感がいい感じになじんできた。
この2年間で渉は松田コンツェルンの副社長となり数年後には社長となる予定。
当然仕事も忙しくて、海外出張も増えた。
私は結婚まではグループ企業で秘書として働き、その後は専業主婦をしながらおばあさまの手掛けてこられたボランティア活動のお手伝いをしている。
松田コンツェルンくらいの規模になれば財団が創設されていて、おばあさまはそこの理事長。
いつかは私にその職を譲りたいとお考えらしい。
「なあ栞奈、俺のプライベート用の携帯知らないか?」
先に朝食を済ませ、離れで着替えていた渉が戻ってきた。
「ええー、知らないわよ。昨日の夜旺にメールしてたから寝室じゃないの?」
「そうか」
すっかり身支度が終わり出かける直前らしい渉は、困ったなって顔で視線を泳がせる。
「今いるの?」
「いや」
「じゃあ、私が探しておいて何かあれば仕事用の携帯に連絡を入れるから。もう、出かける時間でしょ?」
「ああ」
本社に戻ってから専属の運転手さんのお迎えが来るようになった渉。
さすがにせかされることはないが、待たれると気になって私も落ち着かない。
「じゃあ、行ってくる」
「気を付けてね」
とにかくいってらっしゃいと渉を玄関まで見送る。
そのまま出ていくのかと思ったのに、キョロキョロとあたりを見回す渉。
「ねえ栞奈」
ん?
呼ばれて見上げた瞬間、
チュッ。
唇が触れ合った。
「もう、渉ったら」
ここは母屋で、お母さまだって希未ちゃんだっているのに。
口をとがらせてしまった私に、なぜかご機嫌そう。
「お望みならもう1度?」
「バカ」
耳まで真っ赤になった私は、渉の背中を押すように玄関から追い出してしまった。