コイノヨカン
離れに戻り寝室を片付けると、携帯はすぐに見つかった。

まずは渉に見つかったのメールをして、私も出かける準備をする。

「さあ、何を着ようか」

子供園に行けば子供たちと遊ぶことになるから、できればパンツで動きやすい服がいい。
だからと言って、松田の嫁であればジーンズにTシャツってわけにはいかない。
別に何を言われるわけでもないけれど、やはり気は使う。

ピコン。
メールの着信。

渉からだ。

『携帯ありがとう。今日はばあさんと子供園に行くんだろう?無理するなよ』

本当に、結婚してからの渉は私に甘々。
心配しすぎるくらい気にしてくれる。

『大丈夫だよ』

子供園でのボランティアは大学時代からやっていたし、また行けるようになって正直うれしい。

『それと、時間があれば旅行の準備も頼む』

『はい』

OKのスタンプとともに送信すると、すぐに既読になった。

おじいさまの引退とともに忙しくなった渉。
結婚式は何とか行ったけれど、まとまった休みなんて取れないために新婚旅行にも行けないまま半年がたってしまった。
私としては、渉が元気でさえいてくれればそれでもかまわない。
旅行なんて時間ができればいつでも行けるし、とにかく渉の負担にはなりたくない。その思いが強い。
しかし、渉は違ったらしい。
1ヶ月ほど前、
『来月4日間の連休を取ったから、新婚旅行に行こう』といきなり言われ、さすがに海外は無理だから北海道に行くことになった。
その予定が来週から。
期間も短いから、飛行機とホテルだけ取って細かいスケジュールは決めずに2人でゆっくりしようということになっている。
だから、荷物も多くはない。

フフフ。
北海道か、楽しみだな。
せっかくだからおいしいものをいっぱい食べよう。
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