コイノヨカン
「どれだけ心配したと思うんだ?」

しばらくの沈黙の後、少し穏やかになった声で渉が聞いてきた。

「ごめんなさい」

せっかくのハネムーン。
渉は無理してお休みを作ってくれたのに。
私は渉の足を引っ張ってばかりだ。

「栞奈?」

そっと、渉の指が唇に触れた。
なんだろうと首を傾げた私に、

「そんなにかみしめたら血が出るよ」

唇を離れた手が、そっと私の頬を包み込む。

「一人にしてごめん。怖かったよな?」

違う、悪いのは私なのに・・・

ブンブンと頭を振る私を、渉がギュッと抱きしめる。

その途端、今まで我慢できていた涙があふれだした。


「渉、ありがとう」
「うん」

「大好きだよ」
「バカ・・・俺も」


その後、私は何の罪に問われることなく話し合いでけりがついた。
もちろんすべては渉がやってくれたことで、詳細はわからないがとにかく丸く収まった。

そして、ハネムーン最後の晩もゆっくり眠ることはできなかった。
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