コイノヨカン
「ところで、私がお相手をするお孫さんって、」

週に1度外へ連れ出して欲しいって言うくらいだから、小さなお子さんなんだろうけれど、

ククク。
専務の笑い声。

何?

「この子の相手を頼むわ」

そう言って、楓さんが専務を見る。

「はああああ?」

「だから、いちいちうるさい」

私のバカみたいに大きな声を専務が注意するけれど、今はダメ。

だって、
だってだって、
子守の相手が専務なんて。
さすがに無理。

私は軽く深呼吸すると、楓さんの方を向いた。

「あの、」

「栞奈さん。今更やめたは無しよ。もう握手もしたんだからね」

「楓さん。そんな・・・」

「諦めろ。決まったことだ」
まるで人ごとのように言う専務。

一体何を考えているんだろうか。


「皆さん、食事の用意がで来ましたよ」

ドアの外から呼ぶ奥様の声。

「はい」
「今行くわ」
楓さんと専務の声が重なる。

私は1人騙されたような気分になって、ただ俯いてしまった。
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