コイノヨカン
「さあ、着いた」
車が止り、辺りを見渡す。

ここは、銀座?
私でも知っている有名ブランドショップが並んでいる。


まさか・・・よね。
そう思っている私の期待を裏切り、

「いらっしゃいませ」
店の前に立つと中からドアが開けられた。

重々しいドア。
店の中には高そうな服やバック。
そこは、私1人では入ることもできないような店。

「いらっしゃいませ。松田様」

店長らしき女性が奥から出てきた。

綺麗なデザインのスーツを着こなし、キリッとしてカッコイイ。
なんだかワンピース姿の自分が恥ずかしくなった。
もう少しおしゃれすればよかった。
持っている服もないくせに言える台詞ではないけれど、ちょっと惨めな気分。

「どうした?好みの物を選ぶといいよ」

選べと言われても・・・
普段私がが着ていた服とはゼロが2つくらい違う。

「私には贅沢すぎます」
小さな声で、専務に耳打ちした。

「大丈夫。ここは俺が払うから」

「はああ?」
思いっきり不快な顔をしてしまった。

プッ。
吹き出す専務。

「なんて顔するんだ。もう少し喜べよ。今まで連れてきた子はみな大喜びで服やバックを選んだぞ」

んなバカな。
こんなところで気安く物を買ってもらうなんて、無理。
少なくとも今の私にはできないし、たとえ本物の彼女だったとしてもしないだろう。
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