コイノヨカン
「ごめんなさい」

「何が?」

ブラブラと街を歩きながら、私は申し訳ない気持ちになっていた。

「だって、行きつけの店だったんですよね。せっかく連れて行ってくれたのに、あまり買い物できなくて」

足を止め、私を振り返る専務。

「いいよ。それより、気に入らなかった?」

「気に入るも何も、私には贅沢すぎました」

「贅沢ねえ。高い物は品もいいから、大事に使うと思うけれど」

そりゃあそうかもしれないけれど、

「私には手が出ません」

「だから、俺が払うって」

はあぁ。
つい、溜息が出てしまった。

この人は、一体どんな恋愛をしてきたんだろう。
あんな高級店で買い物をしてもらうなんて、無いわあぁ。

「じゃあ、栞奈の行きたい所に付き合うから、どこでも言って」

「今日は、もういいです」

専務には、私のよく行く店の500円や1000円均一のワゴンが並んでいる様子を見られたくない気がした。

「このままブラブラして、食事をして帰りましょう?」

どうせ来週も出かけることになるんだから。

「そうか」

専務は納得してくれた。
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