コイノヨカン
車で15分ほど移動し、着いたのは大きなデパート。
その最上階に、夏季限定の特設プラネタリウムがあった。
秋公開の映画とタイアップしているそうで、特設とは思えない規模の本格的なプラネタリウム。
それにしても凄い人。
すでに行列は下の階まで伸びているし、この様子ではとても入れそうにない。
「無理、みたいですね」
「うーん。ちょっと待ってて」
何を思ったのか、専務は私を近くのベンチにおいて受付に向かって行った。
待てと言われても・・・
5分。
10分。
専務が消えてから、私は1人ベンチに座っていた。
プラネタリウム、見たかったなあ。
私は実の父を知らない。
母が1人で私を産んだから。
小さい頃から、父のことは口にしてはいけないことの気がして母にも聞けなかった。
だからといって、苦労して育ったわけでもない。
母は教師としてちゃんと働いていて、祖父も公務員。
祖母が家にいて私を育ててくれた。
幸せだった。
家庭ってこんなこんな物だと思っていた。
小5まで。
私が11歳の春。
母さんが父さんを連れてきた。
いつも一緒に暮らしていた祖父とは違って優しい笑顔の男性。
「こんにちは、栞奈ちゃん」
そう言われて、私は母の後ろに隠れた。
父さんは国語教師のくせに自然が好きで、色んな話をしてくれた。
夏休みになるとプラネタリウムに連れて行ってくれて、星にまつわる話しを聞かせてくれた。
「すみません。今井栞奈様ですか?」
声をかけてきたのはスーツ姿の綺麗なお姉さん。
「そうですが・・・」
「ご案内いたします」
え?
こちらにどうぞと促され、私は立ち上がった。
その最上階に、夏季限定の特設プラネタリウムがあった。
秋公開の映画とタイアップしているそうで、特設とは思えない規模の本格的なプラネタリウム。
それにしても凄い人。
すでに行列は下の階まで伸びているし、この様子ではとても入れそうにない。
「無理、みたいですね」
「うーん。ちょっと待ってて」
何を思ったのか、専務は私を近くのベンチにおいて受付に向かって行った。
待てと言われても・・・
5分。
10分。
専務が消えてから、私は1人ベンチに座っていた。
プラネタリウム、見たかったなあ。
私は実の父を知らない。
母が1人で私を産んだから。
小さい頃から、父のことは口にしてはいけないことの気がして母にも聞けなかった。
だからといって、苦労して育ったわけでもない。
母は教師としてちゃんと働いていて、祖父も公務員。
祖母が家にいて私を育ててくれた。
幸せだった。
家庭ってこんなこんな物だと思っていた。
小5まで。
私が11歳の春。
母さんが父さんを連れてきた。
いつも一緒に暮らしていた祖父とは違って優しい笑顔の男性。
「こんにちは、栞奈ちゃん」
そう言われて、私は母の後ろに隠れた。
父さんは国語教師のくせに自然が好きで、色んな話をしてくれた。
夏休みになるとプラネタリウムに連れて行ってくれて、星にまつわる話しを聞かせてくれた。
「すみません。今井栞奈様ですか?」
声をかけてきたのはスーツ姿の綺麗なお姉さん。
「そうですが・・・」
「ご案内いたします」
え?
こちらにどうぞと促され、私は立ち上がった。