コイノヨカン
行列の横から、関係者以外立ち入り禁止のドアに入り無機質な廊下を進む。

案内された廊下の先に、専務が待っていた。
隣には数人のスーツ姿の男性。

「待たせたね」
専務が声をかける。

「いえ・・・」
これは一体、どんな状況なんだろうか。

「では、ご案内いたします」

綺麗なお姉さんに案内され、私と専務は薄暗い部屋へと入った。



広い会場。
大きく円い天井。

私の知っているプラネタリウムは映画館のような作りだったのに、ここの椅子は一人ひとり独立していて、立派なリクライニングシート仕様。

「凄ーい」
思わず口にしてしまった。

「こちらにお願いします」

案内されたのは周りの席より幅広なソファーのようなシート。
これって、カップルシート。

「では、ごゆっくりお楽しみください」

「ありがとうございます」
専務の営業スマイル。


「何してる。座れよ」
いつまで経っても席に着かない私に、声がかかる。

「は、はい」
油断すると密着してしまいそうなシートに、私は腰を下ろした。



リクライニングシートを倒し、ほぼ寝転んでいるような姿勢になって見る星空は、素敵だった。
草原に横になっているかのように、時々風が吹いたり草の臭いもする。
これも演出なんだろうか?
1時間ほどの時間があっという間に過ぎてしまった。
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