コイノヨカン
「なかなか良かったな」

専務も納得の様子。

「はい。とっても素敵でした」

素敵なんて言葉では表現できないくらい、感動した。

「演目は3つあって、それぞれ演出が違うらしい」

へー。

渡されたプログラムを見ると、それぞれの草原、浜辺、空に浮かぶ。
きっと、今見たのが草原。
いいな、他のも見たい。

「気に入ったんなら、もう一つ見る?」

「え?」

「せっかくだから、お願いしようか?」

「いいえ。今日はいいです」

「なんで?」
見たいんだろうって、視線が言っている。

でも・・・

「会場前で並んでいる人がたくさんいましたから」

「え?」
意味が分からないって顔。

「ですから、並んでいる人がいるのに自分だけズルしたようで嫌なんです」

「・・・」

「喜ばせがいがなくてすみません」

やり方はどうあれ、専務が私に為にしてくれたことを素直に喜べない自分が申し訳なかった。

「いいよ。でも、これも仕事のうちだから、気にしなくていい」

「仕事?」

「そう。このイベントはうちのグループも協賛していて、オープニングに招待されていたんだ。お陰で顔が出せた」

はああ。

「仕事ですか」
ちょっとがっかりした。

少しだけ専務を見直した自分を後悔した。
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