コイノヨカン
父は私を溺愛している。
唯一の娘ってこともあるとは思うけれど、血が繋がらないからこそ気も遣っている。

「あの・・・昔の話しなんですけれど、私が大学に入ったばっかりた頃に、大学の仲間と飲みに出たんです」

「うん」
それでと相槌を打つ専務。

「その頃まだ子供だったので、お酒も飲んだことありませんでしたし、男の人と付き合ったこともなくて」

「うんうん」
真剣に聞いている。

何だろう?
私は今何を話そうとしているんだろう?

マズイ、酔ってる。
余計なことを言い出しそう。

「それで」
専務に話しを促された。

「一緒に行った女友達と3人で、ナンパしてきた男の子の家について行ったんです」
「はああ?何考えてるの」

「まあ、今にして思えばバカな行動だったんですけれど、当時は3人一緒だし大丈夫かなくらいにしか考えてなくて」

コトン。
専務がグラスを置いた。

「それで?」
凍りつくような視線が私に向いている。

「あの・・・その・・・色々あって警察が来るような騒ぎになった訳です」
「随分端折ったな」

「話したいのはそこではないので。で、当然未成年の私達は親が呼ばれ、駆けつけた親たちは娘をしかりつけて張り倒しました」

「まあそうなるわな」

「でも、うちの父は泣いたんです。私を抱きしめて号泣して、泣き崩れたんです。もちろんその後コンコンと説教されましたけれど、それ以上に泣かれたことがショックでした」

「いいお父さんだな」
ポツリと呟かれた言葉。

「はい」
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