コイノヨカン

2度目のデート

仕事では無表情な上司で、帰宅しても私に話しかけることのない専務。
ただ変化していったのは、奥様と希未ちゃん。
最初の約束では自炊ってことになっていたのに、食事には必ず母屋から呼ばれる。
申し訳なくて断れないでいると、頻繁に声が掛かるようになり、
「帰りが遅いと心配だから、帰ったら顔を見せてちょうだい」と言われてしまった。
これでは完全に居候。
まずいなあとは思うけれど、親切心から言われているだけにどうすることもできない。


ピコン。
金曜夜の恒例メール。

同じ敷地内に住んでいておかしな話しだけれど、毎週金曜の夜専務からメールが届く。
『明日は仕事で抜けられないから、明後日の日曜日に栞奈の服を見に行こう。都合は大丈夫?どこの店がいいか知らせてくれ』

ああ、このあいだはあまりにも高級なブランドショップに連れて行かれて買い物できなかったから。
それにしても明後日か・・・困ったな。



日曜日。

「お待たせしました」
「待ってないよ」

ああ、そうですか。
いつも通りの会話。

「で、どこへ行くんだ?」

「デパートでいいですか?」

「いいけど」

「日曜日なんで、かなり人が多いと思いますが・・・大丈夫ですか?」

「ああ」

「小さな子供とかもいると思いますが・・・平気ですか?」

「大丈夫だ。人を社会不適合者みたいに言うな」

「すみません」

だって、普段の専務を知っているから不安で仕方ないし、専務が人混みの中で列に並ぶ姿が想像できない。
< 53 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop