コイノヨカン
『もしもし、栞奈聞いてるの?』

「うん。聞いているわよ」

『あなた、今月のカード支払いが凄く増えていたけれど』

ああー、クレジットカード。
明細が実家に届くんだった。

ヤバイ。

『何かあったの?』

「何もないわ。ただ物入りだっただけ」

『でも、いつもの倍以上だから』

「だから、仕事を始めて必用な物もあるの。ちゃんと自分で払うから、放っておいてよ」

『でも、』

「もういいでしょう?今、仕事中だから」

『日曜に仕事なの?』

「そうだって言ってるじゃない」

この時点で、私は専務の存在を忘れていた。


スーッと、横から伸びてきた専務の腕が私から携帯を奪った。

え?

「もしもし、突然すみません。栞奈さんの上司で松田と言います」

『はあ』
母さんの驚く声。

「今日は予定があると知らずに休日出勤をお願いしました。申し訳ありません」

『いえ、いいんです。私の方こそお仕事中に失礼しました』

しばらく2人でペコペコして電話は切れた。
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