コイノヨカン
**SIDE 渉**


喧嘩別れのようになってしまってから、俺は栞奈に声をかけなくなった。

翌朝、いつものように挨拶に来た顔は腫れていて痛々しかったけれど、それを気遣ってやるだけの優しさが俺にはなかった。

あれから2週間。

もうすぐ週末。
たまたま出張と重なってしまい、栞奈と出かけるチャンスを2週間ほど逃した。

「でもなあ」
つい口にしてしまった。

ブブブ ブブブ
携帯の着信。

相手は、星野大地。
俺の悪友。

「もしもし」

『何だよ。機嫌が悪そうだな』

「別に」

『そうか?人を殺してきたみたいな声してるぞ』

はー、こんな時にイライラさせる奴だ。
いっそのこと黙って電話を切ってやろうかとさえ思う。

『もしもし渉。聞いてるか?』

「聞いてる。で、用件は何なんだ」

『本当に機嫌が悪いなあ。怒ってばかりいるとはげるぞ』

可笑しそうに電話の向こうで笑っている大地に、むかつく。

「お前の用事が俺の性格についての事なら電話を切るぞ」

『違うよ。用事はある』

「それを言え」

『本当に短気だなあ。そんなんで彼女とうまくやっているのか?』

「何度も言わすな。俺の性格について言いたいなら、切る」

プツン。
俺は電話を切った。

当然すぐに再コール。

結局、会って話がしたいという大地と飲みに出かける約束をした。
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