コイノヨカン
「久しぶりだな」

「ああ」

時々仕事の絡みで会うことはあるが、こうやって個人的に飲みに出かけるのは数ヶ月ぶりだろうか。

「彼女とは上手くいっているのか?」

「イヤ」

「イヤって、お前」

分かっている。
何とかしないといけないと思っている。
でも、1度こじれてしまうと修復は難しい。

「好きになれないとか?」

「いや、そんなことはない」

「相手に好きな人がいるとか?」

「それもないと思う」

「じゃあ、何が問題なんだよ。さっさと落とせ」

いかにも大地らしい台詞だ。
でも、事はそう簡単ではない。

「何かあったのか?」
珍しく心配そうに俺を見る大地。

「喧嘩をした」

「はああ?誰が」

「俺と栞奈」

「それはその・・・いつもみたいにお前が一方的に冷めたとか、振ったとかではなくて?」

何か人聞きが悪いなあ。
まるで俺が恋愛できない人間のように聞こえる。

「おい渉。どうなんだ?」
大地が身を乗り出してきた。

「うーん。違う」

俺は飲みかけの水割りを一気に開けると、大地の方を見た。
< 71 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop