コイノヨカン
「笑うなよ」

「ああ」

「きっかけは些細な言い合いだったんだ。帰りが遅くなった栞奈に、どこに行っていたんだと聞いた。でも栞奈は答えなくて、」

「うん。それで」

「しつこく聞いていたら、『契約で会っているだけなのに何でそんなに聞かれないといけないのか』って言われて、喧嘩になった」

「それから?」

「俺も頭にきて、『もういい勝手にしろ。お前にはがっかりした』と言ってしまった」

「後悔しているのか?」

「まあな」

驚いた顔で俺を見る大地。

「それはもう、謝るしかないな」

それができれば、こんなに悩んではいない。

「それとも、諦めるか?」

「それは・・・」

難しい問題だ。

「実は俺の用事も栞奈さんに関係がある」

「どういうことだよ」

「実は、・・・その前に渉。1つ答えてくれ」

「何だ」

「俺はお前と栞奈さんの契約書を作ったけれど、それ以外に何か取り決めがあるのか?」

「どういう意味だよ」

「会長とお前で何か約束がされているのかと思ってね」

うっ。
俺はあえて否定しなかった。

大地がわざわざ言うからには何か根拠があるはず。
今更隠したって仕方がない。

「実は・・・」

俺はじいさんとの約束を打ち明けることにした。
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