コイノヨカン
「すまないが、会社に行かないといけなくなった」

「トラブルですか?」

「ああ。来週オープンするショップの商品が届かないらしい」

それは、大変。
もう準備は最終段階で、来週のオープンにはたくさんのゲストも予定されているのに。

「大丈夫。単なる手違いだと思うから、栞奈は心配するな。とりあえず会社に行くから、先に映画に行ってくれ。後から追いかけるから」
「でも・・・」
「悪いな。近くの駅まで送る」

最寄り駅まで送ってもらい、私は1人車を降りた。

「終わったら連絡するから」
「はい」

専務は会社に向かっていった。



1人で街に出たものの、行く当てもない私。
いっそのこと帰ろうかとも考えたけれど、もし専務から連絡があったらと思うとできなくて、街を歩き続けた。
お陰で、靴擦れができてしまった。



午後6時。
ほぼ半日さまよったが、専務からの連絡はない。

もう帰ろう。
奥様には、『夕食は外で済ませます』と言ってあったから、何か買って帰らなくては。
コンビニでお弁当を買って、少し寂しい夕食だけど仕方ない。
専務だって仕事で忙しいんだから。

私は電車に揺られながら、自宅に向かった。
結局その日、専務からの連絡はなかった。
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