コイノヨカン
ブランドショップオープンの日。

「とにかく、無事にオープンできて良かったわね」
「本当に」

このブランドがホテルの中に入るのは初めてだそうで、多くの報道陣も詰めかけている。

「これで一安心ですね」
「ええ。商品紛失の捜査は続くだろうけれど」

確かに。
何かがなければ大量の商品が消えたりはしない。
ここまで探して出てこないってことは、単純なトラブルではない気がする。



「ねえ栞奈ちゃん。今日、飲みに行きましょうよ」

「え、今日ですか?」

「うん。実は彼が栞奈ちゃんに会いたいって言うのよ」

「彼って、この前の人?」

「そう。お陰様で付き合うことになってね。彼に栞奈ちゃんのこと話したの」

「私はいいから、2人で飲んでください」

「何で?いいじゃない。彼の会社の人も来るって言うから、一緒に行きましょう」

でもなあ。
ずっと忙しかったから、久しぶりにゆっくりしたいと思ったんだけど、

「どうせ専務達もオープニングパーティーから2次会に流れて直帰になるし、私達は定時で上がれるから。ね?」

はあ、専務は今日遅くなるんだ。

「いいでしょ?」

「じゃあ、少しだけ」

私はOKしてしまった。
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