コイノヨカン
「ワインも、シャンパンもあるけれど、何にする」

すっかりほろ酔い状態の萌さんが、次を勧めてくれる。

「私はもう」

さすがにこれ以上飲んだら、酔っ払いそう。

「いいじゃない。ちゃんと送っていくから」
岡野さんも勧めてくれる。

でもね、酔っ払って帰るわけにはいかない。
もし専務に見つかれば、大変な事になる。
それに、すでに酔いが回ってきているし、

「栞奈ちゃん、どうしたの?」

「いえ。あの、私そろそろ帰ります。遅くなると心配するでしょうし」

「そうか、親戚の家に居候だったわね」

「ええ。ご馳走になりすみませんが・・・」

「いいのよ。1人で帰れる?」

「はい」

「いいよ。僕が送っていくから」

岡野さんが立ち上がった。

「いいんです。1人で帰れますから」

「無理に誘ったのは俺たちなんだから、家の近くまで送ります」

すでに部屋を出て行こうとしている岡野さんを止めることもできず、一緒に店を出た。
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