コイノヨカン
ラーメンには、卵ともやしとチャーシューをトッピング。
私にとっては超豪華番だけど、口に合うんだろうか?

「うん。うまいよ」

予想に反して黙々と食べてくれた専務。

「インスタントラーメンとか食べるんですね」

「もちろん。大学時代は自炊だったからよく食べていたし、子供の頃にも食べた」

へえ、意外。

「なあ栞奈。行くなとは言わないから、飲み会の時は知らせてくれ。心配で仕方ない」

「・・・ごめんなさい」

ちょっと弱った専務の姿に、ホロッときた。
やっぱり専務には強気でいて欲しい。
ちょっと横柄なくらいが似合っている。

「ごちそうさま」

綺麗にラーメンを平らげた専務は、言った途端にゴロンと横になってしまった。

「ダメですよ。そんなところで寝たら風邪をひきます」
「うん。少しだけだから」

完全に寝落ちしている。

仕方ないなあ。
押し入れから毛布を出して専務にかけた。

きっと疲れ切っているはず。
本当なら自分の布団で寝た方が疲れがとれるんだけど・・・仕方ない。
今はこのままにしておこう。
明日になったら少しは元気になっているだろうから。

眠っているくせにピクピクと眉を上げて時々怒ったような顔をする専務。
一体どんな夢を見ているんだろうか?
唇だってカサカサになって、額には小さな吹き出物。
きっと、ストレスのせいだと思う。
どれだけのものを背負って、この人は働いているんだろう。
想像のできない重圧と戦っているんでしょうね。
なんだか急に専務のことが愛おしくなった。

5つも年上の俺様な彼なのに、
契約で半年間付き合うだけなのに、

ギュッ。
専務が寝ていることをいいことに、私はそっと抱きしめた。

今だけ、今だけだからと自分に言い聞かせて私は眠りに落ちた。
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