コイノヨカン
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」

結局、専務と並んで家を出た。

車は専務の運転。
私は助手席。

「忘れ物ないな?」
「大丈夫です」

もう、完全に子供扱い。
まぁ、いいか。


家を出て坂を下り、大きな道に出ると道路は朝の渋滞時間。

「混んでますね」
「ああ」
ちょっと不機嫌そうな専務。

「で、昨日のことを聞かせろよ」

はあ?
「昨日って・・・」

それは、昨日の専務が離れに泊ってしまったこと?

「言えないのか?」

「いえ、その・・・」
私は顔が赤くなった。

「俺に黙って飲みに行くなんて、契約違反だろう?」

え?
そのことかぁ。

ちょっとホッとした。

「そのことは昨日説明したじゃないですか」

「覚えてない」

「『ごめんなさい』って謝って、『いいよ』って言ってくれたじゃない」

「記憶にない」

「それは専務の勝手です」

「お前・・・」

ギロッと睨まれたけれど、謝らない。
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