コイノヨカン
ククク。
フフフ。

しばらくにらみ合ってから、一緒に笑ってしまった。

「2度目はないからな」
「はい」

「素直じゃないか」
「心配させましたから」

「分かっていればいい。お詫びに何か夕食をおごれ」

夕食?

「何がいいですか?」

寿司とか焼肉ならいつもいい物を食べていそうだし、洋食もねえ・・・

「栞奈が作ったものなら何でもいいよ」

作ったもの?

私は専務を凝視した。

「インスタントラーメンはもう食べたから、それ以外のもので頼む」

「いや、そんな、いきなり言われても」

「そんなに悩むな。じゃあ、カレー。栞菜の作ったカレーが食べたい」

「はあぁ」
まあ、カレーくらいなら。

「わかりました。作っておきますから・・・お仕事頑張ってください」

「うん。楽しみにしている」

私だって、恋愛経験がないわけではない。
もちろん豊富って訳ではないけれど、それなりに付き合ってきた。
でも、みんな同い年の同級生。
お互いに虚勢を張りながら、共に成長する友達の延長のような関係。
専務は彼らとは違う。
私よりも人間として一回り大きくて、私の前に立ち守ってくれる。
私の中で、専務の存在が大きくなっていく。
・・・危険だわ。
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