コイノヨカン
楓さんが乗ってきた運転手付の高級車に私も乗せられた。


走ること30分。

場所は都内の高級住宅地。
大きな門を車が入ると、そこは別世界だった。

広い敷地に綺麗に手入れされた庭と、建物が3つ。
一番大きな建物が母屋で、残りが離れだろうか。
和風の建築ではあるんだけど、モダンな感じ。

おっしゃれー。
心の中で呟いた。



「さあ、どうぞ」
楓さんがドアを開けてくれて、

「お邪魔します」

大きな木製のドアの中へと入る。

広い吹き抜けの玄関ホールは正面がガラス張りで、その奥に中庭が見渡せる。

スゴイ。
これは凄すぎる。
一般家庭のレベルじゃない。

「楓さんって、何者ですか?」
失礼とは承知で、声をかけた。

「私は普通のおばあちゃんよ」

嘘だ。
この家は普通じゃない。

玄関へは入ったものの、動けないでいる私に、

「さあ、どうぞ」
中年の女性が出てきて、スリッパを出してくれた。

「あ、ありがとうございます」

私は状況が理解できないまま、勧められてお家にお邪魔した。


その後、食事をご馳走になりお風呂をいただき、よかったら使ってと着替えまで出してもらって、私は離れへと案内された。
本当にこんなにしてもらっても良いんだろうかと怪しみながら、温かなベットに入った瞬間眠りに落ちた。
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