コイノヨカン

「おはようございます」

支度をすませ、専務室へ朝の挨拶。

「おはようございます」
専務も仕事の顔になっている。

「本日のスケジュールです」
萌さんが予定表を差し出す。

「ありがとう。ああ、午前中に香川凛さんが来るから、通してください」
「はい」

かがわりん？
初めて聞く名前。



「香川さんってどなたですか？」
秘書室に戻るとすぐに、萌さんに聞いた。

｢香川凜さんは、香川商事のご令嬢。歳は・・・25歳かな。2，3年前には専務との恋の噂もあった人。綺麗な人よ｣
｢へえ｣
でも、何でわざわざ会社に来るんだろう？

｢今回の騒動も凜さんの尽力で解決したって聞いたわ」

今回の騒動って、商品紛失騒動？

｢じゃあ、替わりの商品を調達したのって、｣
｢香川商事らしいわ｣

へえ。

「案外専務との結婚話も復活するかもしれないわよ」

「そうですね」

気持ちがザワザワしているのを必死に隠して、私は平気な振りをした。