コイノヨカン
お昼休み、専務は凜さんとランチに出ていった。
私は萌さんと社食に向かう。


「ねえ、昨日はまっすぐに帰ったの?」
「ええ」

「本当に?」
「はい。どうしてですか?」

「だって、健さん、栞奈ちゃんに興味があるみたいだったし」

健さん?
岡野副社長のこと。

「そんなことないですよ」

ダメダメ、これ以上松田財閥の血族に関わったら危険。

「又飲みに行きましょうって、悠仁からの伝言」
「はあ」
としか答えようがない。

色々と秘密を抱えている身としては、余計なことは言えない。

「栞奈ちゃんって、本当に彼氏いないの?」

私の煮え切らない反応に、萌さんが直球を投げてきた。

「彼氏はいません」

「そう」

「でも、いいなと思っている人はいます」

言ってしまった。
ちょっと顔が赤くなっているのが自分でも分かる。

「ふーん」
それ以上、萌さんが追求してくることはなかった。
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