コイノヨカン
その日、専務は午後の予定をキャンセルして凜さんと香川商事へ向かい、会社に帰ってくることはなかった。
私も萌さんも定時で会社を出た。


おそらく今日、専務の帰宅は遅くなるだろう。
きっと凜さんと食事でもしてくるはず。
それでもいい。

私は買い物をしてお屋敷に帰った。
タマネギ、人参、ジャガイモ。
鶏肉、ヨーグルトとトマト缶にカレー粉とスパイス。
一通りの材料を揃え、母屋に向かう。


「本当に手伝わなくていいの?」
「大丈夫です。少し時間はかかりますが、1人でできますので」

このカレーはおばあちゃん直伝の味。
お袋の味とは又違うけれど、本格的で美味しい。

「カレールーを使わないのね」

「はい。鶏肉をヨーグルトとスパイスに付けるのがコツで、味付けは塩こしょうとカレー粉、隠し味のウスターソースだけです」

「へえ」
奥様不安そう。

スパイスとヨーグルトで下準備をした鶏肉を1時間ほど煮込み、野菜を入れ、水分が飛んだところで完成。



「お待たせしました」

「どれどれ」
奥様の味見。

「どうですか?」
「うん。美味しい。お店の味がするわ」

へへへ。

「本当、美味しい」
希未ちゃんにも楓さんにも好評だった。
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