コイノヨカン
しばらくして、玄関の開く音がした。

「ただいま」
どうやら、専務の帰宅。

良かった、帰ってこれたんだ。
今なら温かいうちに食べてもらえる。

近付く足音。

ん?

「ただいま」
「お帰りなさい」

「こんばんは」

あっ、
凜さんも一緒。

マズイ。
そう思うより早く、凜さんの方が反応した。

「あなた、秘書さん?」

「ええ。今井栞奈と言います」

なぜ、あなたがいるのと視線が言っている。

早く、ここから逃げだそう。
そう思っているのに、

「今日は栞奈さんがカレーを作ってくれたのよ」
「へえ。どれどれ」
希未ちゃんと専務の兄妹の会話が行われ、ペロリと専務がカレーを味見。

「美味いね。俺にもちょうだい」

立っている凜さんを気にもせず、専務は席に着いてしまった。

「ほら、栞奈さんも座りなさい」
奥様の声。

はあ、でも・・・
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